NEWS / 2024/4/20

オンラインジャーナル第15号総評

これまで「論文」「研究ノート」「実践報告」で構成されていたオンラインジャーナルは、第15号より「論文」「報告-アートミーツケアを考える-(以下、報告)」「エッセイ-アートミーツケアを試みる-(以下、エッセイ)」の3カテゴリに刷新しました。また、本号より、執筆の助けとなるように、論文と報告の「執筆ガイドライン」を編集委員会で作成しました。結果、投稿数は、論文4件、報告2件、エッセイ3件の全9件でした。採否の決定プロセスを経て、オンラインジャーナル第15号への掲載数は、論文0件、報告1件、エッセイ3件の全4件となりました。

「論文」は、これまでの「論文」と同様、査読付きの学術論文を募集するものです。募集要項において「アートとケアの実践や理論に関して学術性をもつ形で論述したもの」と定義しており、学術性を「先行研究に照らし合わせたときの新規性、十分な論述・考察・批判的検討による信頼性、社会への貢献・分野の開拓という観点での有用性を指す」としています。厳正な査読の結果、有益な調査や報告ではあるものの、上記に示す学術性を有する論文の質には届かない内容であったことから、いずれも採択にいたりませんでした。なかには、後述する「報告」での投稿であれば採択可能性が残されていたと思われる投稿もあり、今後編集委員会としては、論文の質向上のための取り組みとあわせて、新しくなったカテゴリの周知にもつとめたいと思います。

「報告」は、これまでの「実践報告」を引き継ぎ、「アートとケアの内容や方法を扱い、実践に立脚し、将来のアートミーツケアに関する研究に資する独創的な視点を有するもの」と定義しています。執筆ガイドラインに則した編集委員からの修正依頼を行うプロセスを経て、1件の投稿取り下げ依頼があり、1件が掲載となりました。本号より、報告には、会員1名によるコメントをもらい、記名式で公開することを基本としました。これは、実践者と研究者または実践者同士の双方向性のあるやり取りが、実践と言葉を深めていくことを期待したものです。本号はその一歩となる報告とコメントが寄せられたと考えられます。

「エッセイ」は、本号より新しく設けたカテゴリです。「アートとケアを主題に据えた、会員による自由な思索や論考」であり、「研究論文では表現しきれない文体や言葉遣い、思考の揺らぎをも視座に含む」と定義しています。エッセイの特徴は、「文章表現のほか、オンラインでの掲載であることを活かした写真、映像、音楽等のメディアを含めた表現とすることも可能」としていることと、テーマを設け、編集委員が依頼する選者が選定を行う形式としたところです。本号のテーマである「境界をまたいでみたら」に対して、文章表現2件、文章表現と写真等を組み合わせた1件の投稿がありました。選者である森合音氏は、「切実かどうか」「境界をこえようとしているか」を選出の指標とし、全3件が掲載となりました。

オンラインジャーナルは、アートとケアが交わる活動の探究と研究を進めるにあたり、多様な立場の人々が、現場で起こっている現象や意味を考え、共有し、次の知へと向かう手がかりとなる媒体となることを意図しています。会員の皆さんには、ぜひ今後もオンラインジャーナルを活用いただき、共に言葉や考えを紡いでいけたらと思います。

最後になりましたが、お忙しいなかご協力いただいた査読者、コメント者、選者の皆さまにお礼を申し上げます。

オンラインジャーナル編集委員一同