NEWS / 2025/5/28

2025年度大会 発表要旨(ポスター発表)

アートミーツケア学会 2025年度総会・大会
ポスター発表要旨

2025年9月20日(土)15:10〜16:00
ポスターセッション コアタイム
※複数の発表が同時並行で進行します。

アートミーツケア学会2025年度大会発表要旨(ポスター)PDFデータ
(8月13日更新)

ポスター(1)
実践報告「ベトナム戦争終結50周年 枯葉剤被害者を支援して」
西野昌克(特定非営利法人 美しい世界のため)、内本年昭(特定非営利法人 美しい世界のため)、原 光弘(特定非営利法人 美しい世界のため)

【キーワード】
ベトナム戦争、枯葉剤、ドクちゃん、壁画、絵本

【発表要旨】
私たちは、“ベトちゃんとドクちゃん”で知られる元結合双生児グエン・ドク氏と連携して、平和についての講演、ベトナムの枯葉剤被害者らへの支援、そして“芸術を通じて世界に平和を発信”している。その活動内容は、楽曲制作、ミュージックビデオ制作、舞台演奏、壁画制作、美術教育ワークショップ実施、日本文化体験交流会実施、音楽コンサート開催、絵本制作、劇場映画製作協力など多岐に渡る。 当法人の定款にもある“芸術を通じて世界に平和を発信”する事業について、今回2つの事例を紹介する。 まず、2017年にホーチミン市の戦争証跡博物館での壁画制作プロジェクトである。博物館の託児室に「White Doves Carry Peace(白鳩が平和を運ぶ)」をコンセプトに壁画を完成させた。ドク氏も交えて博物館長と対話する場を持ち、館内で子どもたちがくつろぐ場所である託児室に平和をテーマにした壁画制作の意義を伝えた。これまでにホーチミン市の孤児院等へ慰問活動を行っていたり、ベトナム人歌手と協同してミュージックビデオ制作を行っていたりという実績があった為、館長は好意的に検討してくれた。それまでは3つの壁面にベトナムの北部、中部、南部の3つの風景が描かれていたのだが、35×3.5メートルに渡りテーマをもった絵画が描かれることになったのである。原画は大阪通天閣の天井画復刻を担当した沖谷晃司(日本画家)が担当した。そして、現地の日系企業に塗装作業などの技術支援を取り付け、日本から25名、ベトナムから25名の画家や学生や一般市民が筆を取り、一か月かけて壁画を完成させた。博物館に立ち寄った見学者も筆を取り、300名以上が手を入れた壁画になったのである。8月の完成披露式典には、枯葉剤被害者約30名を招待し、スピーチや歌で平和を誓った。この模様はベトナムや日本のメディアも取り上げ、戦争が終わっても苦しみを抱える枯葉剤被害者の心に、社会全体で寄り添う必要性を訴えたのである。 2つ目は、2021年に実施した「『グエン・ドクさんの奇跡の物語』を次世代に絵本で伝える」というプロジェクトである。購入型クラウドファンディングで目標金額300万円を達成し、ドク氏の生い立ちを綴った絵本「ぼくのお父さんはドクちゃん」を制作した。 現在、40才以下の人たちの多くは、“ドクちゃん”も“ベトナム戦争”も“枯葉剤”のことも風化傾向にある。人類が戦争被害者をつくらないような世界にするためには、この絵本を通じて、「平和の尊さ」や「家族の大切さ」を感じ取ってもらいたい。その思いを具現化する一つの取組として、この絵本を発刊したのである。この絵本の広報とともに、枯葉剤に関するシンポジウムや市民向け平和講座を開催している。 今後も、戦争被害を風化させないことで、平和を祈念する人を増やしていきたいと考える、そういった営みが、他者との精神的なつながりを感じられることにつながり、人々の生活改善と心の平穏に寄与することにつながると我々は信じて活動している。

 

 

ポスター(2)
実践報告「誰もが描ける、誰もが語れる「物語」へ」
請井且恵(アートサポートラボ)

【キーワード】
AIアート 、心に息づくアート 、暮らしに寄り添うアート 、感じる心 、インクルージョン

【発表要旨】
誰もが描ける、誰もが語れる「物語」へ
『アートサポートラボによるインクルーシブな創作実践』

私たちアートサポートラボは、障がいのある方々が自らの感情や想像を表現し、社会とつながる機会を創出することを目指して活動しています。2025年11月、愛知県刈谷市美術館で開催予定の『AIアートなインクルージョン物語展2025』は、その活動の集大成とも言える展覧会です。

本展の特徴は、絵を描くことに自信がない方も、AIを「筆」として用い、自身の中に浮かぶ情景や感情を作品として表現している点にあります。使用するツールは主にAdobe Fireflyなどの生成AIで、参加者はスタッフのサポートを受けながらプロンプト(言葉による指示)を入力し、AIと共に作品を作り上げていきます。

こうして生まれたアート作品は、完成後に額装され、展覧会で展示されます。そして展示を終えた作品は、すべて本人の手元に戻され、自室の壁に飾られます。そこから生まれるのは、単なる「作品の所有」ではなく、日常空間にアートが入り込むことによる生活の変化です。

「部屋が明るくなった」「この絵に似合う花を飾ってみたくなった」そんな声が参加者や家族から寄せられています。アートは、日常の中に静かに根を下ろし、空間や気持ちに小さな変化をもたらしていきます。その過程こそが、この展覧会が描くもう一つの「物語」であり、私たちは作品の完成だけでなく、その後の暮らしの彩りまでを大切に見つめています。

展覧会では、年齢や障がいの有無を問わず、さまざまな人がAIを介して生み出した作品が並びます。それぞれの作品の背後には、その人の物語があります。展示空間は、単なる視覚鑑賞の場にとどまらず、来場者が多様な表現と向き合い、感じ、考える場となるよう設計されています。

本展の理念は、アートとテクノロジー、そしてインクルージョン(包摂)の交差点にあります。AIを活用することで、これまで表現することをあきらめていた人々が、新しい「声」を持つことができる。そして、その表現が他者とつながり、社会に新たな価値をもたらすのです。

本発表では、AIアートワークショップの具体的な実践例、参加者の変化、作品の社会的インパクト、展示後の生活環境の変化について共有し、AIを媒介とした創作活動が福祉や教育現場で果たしうる役割について考察します。また、今後の展望として、AIアートを通じた地域連携や、多文化共生の可能性についても提案いたします。

 

 

ポスター(3)
実践報告「当事者による表現活動の継続可能性と柔軟な変容―こわれ者の祭典およびK-BOXの実践にみる変わらなさを基盤とした活動プロセスの検討」
杉本 洋(新潟医療福祉大学)

【キーワード】
当事者、表現活動、継続、変容

【発表要旨】
こわれ者の祭典およびK-BOXは、摂食障害や依存症などを抱える当事者による表現活動として2000年代初頭より継続されてきた。両者はパフォーマンスを通じて当事者の語りや交流の場を創出する実践として注目されてきたが、近年は活動形態やメンバー構成に変容が見られている。

K-BOXは、かつては定例ライブを中心に活動していたが、一時的に休止を挟んだ後、講演会形式を主体とするスタイルへと移行した。主宰者のKacco氏によって、新潟県内にて定期的に新潟県内上越市と新潟市で講演活動が継続されており、パフォーマンスが行われない場合でも、経験談の共有や個別相談の機会が提供されている。定例ライブとは異なり、講演会というスタイルでありながら、講演会と同様年2回程度の参加者を交えた交流会の企画がなされるなど、定例ライブで培われたパターンが活用されている。

近年では活動に共鳴する参加者が増え、メンバー募集のチラシが再び作成されるなど、活動再構築の兆しが見られる。音楽や演劇などの表現者は減少したものの、個別のパフォーマンスや講演運営への参加といったかたちで、活動への多様な関わりが広がっている。

一方、こわれ者の祭典は新型コロナウイルス感染症の影響により一時的に活動を休止していたが、感染状況の落ち着きとともに再開され、東京と新潟でイベントが継続的に実施されている。活動当初からの出演者とともに、新たな参加者やゲストの入れ替わりも見られ、柔軟な構成が特徴となっている。また、少人数体制で司会なども外部に依頼せず、観客の声を拾いながら進行するなど、参加型・当事者主導の姿勢を強める新たな試みも展開されている。また、活動の拠点とする新潟にゆかりのある作家の坂口安吾にちなんだイベントをミニシアター関連の伝手から企画が進んでいる。坂口安吾にちなんだイベントは過去に開催されたこともあり、長期にわたっての活動の連続性が垣間見られる。

両活動とも20年以上の活動歴を有し、現在ではメンバーやスタッフ、観客の年齢層の上昇が見受けられる。K-BOXにおいてはラディカルな転換が行われたが、変化の前後を通じて「表現を求める当事者に場を提供する」という理念は一貫している。こわれ者の祭典においても、かつて離れていたメンバーが再び参加する動きや、新たな表現形式の模索がみられる。

長期にわたる活動の中で、変化を柔軟に取り込みながらも、当事者表現を支える場としての機能を維持・発展させている点はアートとケアの考察、特に継続可能性や持続的発展、確固たる信念を基盤とした柔軟な変容といった活動のプロセスを含めた検討への貢献が期待される。

 

 

ポスター(4)
研究発表「精神医療をめぐる経験を記述するための文学の効用:認識的不正義に抵抗し、支援のパラダイムを問い直す」
大野美子(大阪大学大学院 人間科学研究科)

【キーワード】
精神医療、lived experience、文学、認識的不正義、解釈的周縁化

【発表要旨】
【背景】 近年、精神保健医療福祉においては、障害福祉サービスでピアサポートが報酬化され、専門職中心だった支援現場に経験専門家(lived experience)が参画する動きがある。自らの病の経験を活かして支援に当たるピアスタッフは、支援のパラダイムを変える力を秘めた存在である。 ただし、従来「ケアする側」と「ケアされる側」という異なる立場に置かれてきた者たちが、互いの声を聴きあい対等な立場で協働することは決して容易でない。とりわけ、従来ケア対象者として客体化されてきた者たちが、声を発するには準備が必要である。「解釈的周縁化hermeneutically marginalized」(フリッカー2023:198)された人たちは、自らの状態や経験を記述する解釈実践(言葉や概念を作り、知識を交換し蓄積する営み)から周縁化されることにより、自らの経験をうまく伝えられず、自分が何を経験しているのかを理解できないことがある。彼らがlived experienceを語るためには、自らの経験を語る言葉を他者とともに作る作業が要請される。

【内容】 私は精神医療にユーザー/家族/専門職の三つの立場から関った。私が入院患者であったとき、私の言葉は医療化された文脈で「症状」や「問題行動」として解釈された。「医療の言葉」を取り込んで話すことを覚えると、医療者とのコミュニケーションは容易になったが、自分の経験や気持ちを語ることから乖離する感覚があった。その後、専門職として専門理論を纏って支援に当たる中で、精神医療の言葉は良くも悪くも説明性能が高くわかった気になりやすいのだと理解した。異なる立場の人の間で通訳が得意になったが、求められる文脈で器用に言葉を置き換えて話すうち、私自身のlived experienceを語ることからは遠ざかった。 本発表では、精神医療をめぐる経験を記述する際の文学の効用を考察する。私は文体をめぐる試行錯誤の末、「精神医療をめぐる経験の語り部活動」として詩やエッセイを書くようになった。詩を書くとき、使い古された言葉を用いないという決意が、自分の声を導いてくれる。連作エッセイを書くことで、ひとつのテーマで貫かれつつも、矛盾し生成し続ける自己を変奏曲のように表現できる。死者の声すら取り込みながら、複眼的視点、多声で描かれる出来事の連鎖を描けるのである。 私はさらに、作品を学術研究に取り込んで、支援のパラダイムを問い直す応用哲学研究に取り組んでいる。私の研究手法は、応用哲学、オートエスノグラフィ、アート・ベースト・リサーチを一部に含み、学術研究の新しい話法や文体を創造しようとするものである。私自身の内部の異なる立場の者たちによるコ・プロダクション(共同研究)であり、メンタルヘルスケアの新しい解釈資源(言葉や理論)を作るソーシャル・アクションである。これら作品や論文を書くことは、精神科患者に対する認識的不正義(Fricker2007)への私なりの静かな抵抗なのである。

【参考文献】 Miranda Fricker(2007) Epistemic Injustice: Power and the Ethics of Knowing. Oxford University Press.ミランダ・フリッカー『認識的不正義』佐藤邦政監訳、飯塚理恵訳、勁草書房、2023.

 

 

ポスター(5)
研究発表「「癒し」をテーマにしたアート制作経験が美術学生に与える心理的影響:ホスピタルアートプロジェクトにおける制作者視点からの教育可能性の探求」
大場新之助(金城大学)、荒木由希(金城大学)、大畑友紀(金城大学)、渡邊亮士(金城大学)

【キーワード】
ホスピタルアート、美術教育、癒し、心理的変化、非認知的学習成果

【発表要旨】
本プロジェクトは、2024年度に実施された「癒し」をテーマとするホスピタルアートコンテストを出発点とし、アートが医療、教育、地域社会に及ぼす影響を多角的に検証するものである。これまでの先行研究や昨年度の取り組みでは、主に鑑賞者側の心理的・感情的な効果に注目が置かれてきたが、本研究では、「癒し」をテーマとしたアート制作経験が、制作者である学生自身の内面にどのような影響を与えるかに焦点を当て、その教育的可能性を探ることを目的とする。

従来の先行研究は、アート制作が制作者にもたらすストレス軽減や気分改善効果を報告するものの、「癒し」という特定のテーマを明示的に設定した制作が制作者の心理に与える影響を直接検証した研究は限られている。2024年度に松任石川中央病院で展示された学生作品は、来院者や医療スタッフから好評を博し、アートが医療現場に癒しや安らぎをもたらす可能性が示唆された。しかし、これまでの評価は主に鑑賞者(患者や医療スタッフ)の反応に注目しており、実際に作品を制作した「制作者」側の意識や変化については、十分に検証されていないのが現状である。

本研究は、学生が「癒し」を意識したアート制作に取り組む過程において、自己内省や他者への共感、社会的貢献感といった心理的動向がどのように変容するかを明らかにすることを目的とする。教育的観点からは、芸術表現を通じた医療福祉への参画経験が、学生の専門性涵養や倫理的想像力の育成に資する点にも注目する。

そのために、今後、コンテストに参加した学生への詳細なインタビュー調査を実施する予定である。この調査では、作品制作に込めた想いや、芸術教育において従来の技能的・認知的評価では捉えにくい、情意的側面(感情的成長、共感性、自己理解の深化等)や社会的意識の形成といった非認知的学習成果を多角的に掘り下げる。得られた質的データは、精緻な分析手法を用いて、「癒し」を目的としたアート制作が学生自身の心理にどのような変化をもたらすのか、その全体的な傾向や共通パターンを明らかにすることを目指す。

本研究は、芸術教育における非認知的学習成果、すなわち情意的成長、倫理的想像力、社会的連携力などを可視化し、今後の教育プログラムの改善に資するエビデンスを提供することを目的とする。また、「癒し」をテーマとしたアート制作が制作者自身の心理にどのような影響を与えるかという点は、従来のアートセラピーや芸術教育研究において十分に検証されてこなかった領域であり、制作側の心理変容を扱う実証的研究として学術的にも新規性が高い。本プロジェクトは、アートとケアの融合が生み出す社会的価値を可視化し、医療空間の在り方や地域社会における芸術の可能性に新たな展望を示すものとなるだろう。

 

 

ポスター(6)
実践報告「祭りを通した復興支援は可能か:参加者全員が共に祈るために」
藤波 努(北陸先端科学技術大学院大学)、郷右近 英臣(北陸先端科学技術大学院大学)、白肌邦生(北陸先端科学技術大学院大学)

【キーワード】
祭り、地域共同体、復興支援、部外者関与

【発表要旨】
[前口上] 祭りをアートと捉え、それが共同体を手入れ(ケア)するものと考える。祭りは神事であり、神との接触が日常生活を賦活する。非日常的体験を通して超感覚的世界を垣間見る点で祭りはアートである。共に祭事を執り行うことで、共同体意識が醸成される。子供を大切にし、長老を尊重する姿勢が生まれてくる。祭りは他者をケアする心を養う場でもある。そのような心持ちが、災害時に連携し、諸問題に迅速に対処できる態勢を整える。

[活動] 2024年1月1日に発生した地震により能登半島各地が甚大な被害を被った。建物や社会インフラの再建が進む中、立ち直りの象徴として祭りの開催を望む動きが随所で見られる。しかし人口が減少する中、人手を要する祭りを運営するのは困難である。小規模な町村で開催を諦めるところも少なくない。そのような状況において、縁のあった七尾市・一本杉商店街から要請を受け、学生ら27名とともに夏祭りに参加した。

[結果] 400年以上の伝統がある商店街の祭りに部外者が参入することに躊躇もあったが、精神面での復興に寄与できるなら意義がある。とはいえ参加する側・受け入れる側、互いに初めての試みなので、それなりの混乱があった。困難を乗り越え重責を果たしたとき達成感があった。

[課題] 初回を乗り切ったが、部外者が持続的に支援を続けていくには課題がある。端的に「何のために祭りに参加するのか」を明確にしなければならない。この問いは住民にとっても重要なはずだが、伝統を守ることが前面に出て表面化していない。他者の幸せを願うことが夏祭りの主題であり、皆が互いに相手の幸せを願うことで全員が幸せになる。これが共同体の手入れの意味である。大学人と住民が互いの幸せを願う間柄をいかにして築くかという課題が浮かび上がる。

[展望] 固有の文化を継承する地域を介して、住民と部外者が互いを益することが可能だろうか。住民が大学生の学びに寄与した、あるいは大学生が住民によいものをもたらしたという感じを残すにはどうしたらよいのだろう。仮にそれが成功したとして、その時、共同体はどのように変容しているだろうか。風土はそこでどのように関与してくるだろうか。地域ケアとしての祭りを存続させるにはこれらの問いに応えていく必要がある。

 

 

ポスター(7)
実践報告「患者家族に寄り添う待合空間-筑波メディカルセンタ病院ICU家族控室改修プロジェクト-」
園家悠司(特定非営利活動法人チア・アート)、冨山彩乃(筑波大学大学院、特定非営利活動法人チア・アート)、岩田祐佳梨(筑波大学芸術系、特定非営利活動法人チア・アート)、窪田蔵人(筑波メディカルセンター病院)、遠藤友宏(筑波メディカルセンター病院)、池井宏代(筑波メディカルセンター病院)、古谷亜津子(筑波メディカルセンター病院)

【キーワード】
ICU家族控室、改修プロジェクト、協働、学生、空間デザイン

【発表要旨】
筑波メディカルセンター病院のICU家族控室老朽化に伴い、学生と病院、NPOが協働して改修を行ったプロジェクト。

当院は茨城県南地域の三次救急医療を担う救命救急センターを有しており、年間6,300件を超える救急車搬送によって重症患者の受け入れを行っている。今回の対象であるICU家族控室は、重症度の高い患者の家族がICUで治療を受けている間、手術が終了するまで待機するための部屋である。一日あたり最大10組が利用し、長い時は10時間近く滞在する場合もある。患者家族の不安と緊張が蓄積されていく場所に対して、少しでも心の負担を軽減できる空間にするために、プロジェクトが始まった。

プロジェクトは、筑波大学芸術の学生、NPO、医師、看護師、経営企画課など多職種の協働で、2022~2025年の3年間にわたって行われた。丁寧な現場リサーチをもとに学生が設計し、医師、看護師、経営企画課らを交えた意見交換の場である「プロジェクト会議」を何度も行った。プロジェクト会議では、模型や図面を用いて実際の様子を想像しながら、専門の異なる多角的な視点から議論を行い、患者家族の気持ちに寄り添った空間を作り上げていった。ICU利用者のご家族や病院スタッフへのヒアリング、利用実態調査から、従来の「狭く圧迫感がある」という課題に加え、「面会待ちの短時間利用、手術を待つ長時間利用と異なる状況の家族が混在しており、どちらにも寄り添った空間が求められていること」「ICUエリアが日常との断然を感じる空間になってしまっており、患者家族の不安に繋がっていること」「家族控室で過ごす家族は、経緯も抱える心境もそれぞれ異なること」が明らかになった。そこで、「印象に残りすぎないデザイン」と「気持ちの換気ができる空間」の2つをコンセプトに設定した。既存の家族控室3部屋のうち2部屋を個室として残しつつ、1部屋を「つつまれるような奥まった半個室空間」、さらにICU廊下に面した場所に「オープンな待合室」を新設することで、患者家族が自身の心境や状況にあった空間を自由に選択できる空間をデザインした。改修を行ったことで、暗い印象であったICU全体の雰囲気が明るくなり、面会時には混雑して廊下に人が溢れてしまっていた状況を解消することができた。さらに、緊急手術で駆けつけた患者家族同士がオープンな家族控室4で待ち合わせを行ったのちに個室で過ごすなど、当初想像していなかった複数の空間の使い方も見受けられている。当院は、2007年より筑波大学との協働で環境改善に取り組み、家族控室、エントランスなどのアートデザイン活動を行ってきた。本プロジェクトは、簡素な空間になりがちな家族控室を患者家族の心のケアの場として捉え直して設計し、2021年の「緩和ケア病棟家族控室改修プロジェクト」で実施したクラウドファンディングの余剰金(約500万円)を活用して改修を行った。地域の方からの支援・協力をうけながら、患者さんとご家族のための空間を作りあげた。

 

 

ポスター(8)
研究発表「作曲家が設計する高齢者向け合奏ワークショップの自由記述と観察を通した仮説形成サイクルの検討」
三宮柾名(東京藝術大学共創拠点連携機構)、杉浦瑛優(東京藝術大学大学院音楽研究科(研究時))、佐藤直樹(東京藝術大学共創拠点連携機構)

【キーワード】
共創、高齢者、合奏

【発表要旨】
【目的】本研究の目的は、作曲家が設計する合奏ワークショップ(以下WS)が、どのようなプロセスを経て、高齢者にどのような経験をもたらしたかという仮説を、観察データと自由記述回答を基に構築することである。

【WSの概要】 本WSは、音楽経験の有無に関わらず誰もが参加できることを目標として、作曲家が中心となって設計した。今回、打楽器のみで演奏可能な器楽曲を、「管理された偶然性」という概念に着想を得て制作した。管理された偶然性とは、作曲家が偶然性を意図的に取り込みつつ、構成と演奏を制御し、予期せぬ音楽的響きを生み出す方法論である。WSでは、参加者6名(心身ともに健康な65歳以上の高齢者)を2グループに分け、2名の指揮者が文字情報でランダムに提示する日本の文化に根差したリズム(三本締め、盆踊り等)を打楽器で表現した。WS後、参加者には活動の感想を自由に記述するよう求めた。得られた記述とWS中の観察を踏まえ、高齢者の経験や感情が生まれるまでのプロセスを定性的に検討した。本研究は東京藝術大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。

【構築された仮説案】本研究の分析から、演奏活動を通じて参加者が肯定的な経験を得る過程には、大きく3つの要因が関与しているという仮説案を立てることができた。第1に、参加者にとって馴染みあるリズムで曲を構成したことによって、眠っていた身体知の発露やリズムに紐づいた経験の回想が促進され、演奏活動へ没入するための土台となった可能性がある。第2に、作曲家がWSに導入した創造的な仕掛けが、高齢者にとって新たな刺激や音楽自体への満足感をもたらしたと考えられる。これらの仕掛けの例として、水に浸したシンバルのような音程を操作できる楽器の使用や、様々な音域の打楽器を採用したこと、管理された偶然性という現代音楽に基づく概念の導入等が挙げられる。第3に、演奏風景を外部、即ち研究者と参加者以外が見られるようにしたことが、練習活動に没頭する動機付けとなり、結果として演奏への達成感につながったと推測される。これら三つの要因が相互に作用しながら、参加者にとっての肯定的な経験が形作られた可能性がある。

【展望】本研究では、公衆衛生学的な方法論を導入した定量分析の結果を踏まえ、観察データと自由記述回答を定性的に分析した結果、「なぜこの介入が効果を示したのか?」という問いに対する仮説案を構築することができた。今後は、1対1インタビューで収集した語りの体系的な分析を通じて仮説をさらに洗練させ、定量的な仮説検証によってその理論的な妥当性を確認していく必要がある。

 

 

ポスター(9)
研究発表「打楽器合奏による高齢者の心理的効果とその作用機序の探索:単群前後比較研究」
三宮柾名(東京藝術大学共創拠点連携機構)、杉浦瑛優(東京藝術大学大学院音楽研究科(研究実施時))、髙木諒一(東京藝術大学共創拠点連携機構)

【キーワード】
高齢者、音楽、ウェルビーイング、定量評価

【発表要旨】
【序論】高齢者の孤独・孤立が深刻化する日本では、彼らの主観的幸福感を高める取り組みへの関 心が高まっている。特に合奏は、日本の高齢者の認知機能や気分を改善すると報告されている(Shimizu et al., 2018; Sung et al., 2012; Shinada et al., 2025)。しかし、合奏がどの ようなプロセスを経て、彼らの感情を変化させるかという知見は明らかになっていない。 この変化プロセスに関する仮説生成は、今後の高齢者向け合奏ワークショップ(以下 WS)の設計・評価において重要な指針となる。本研究は、様々な音楽経験を持つ高齢者 を対象に、打楽器合奏の即時的な心理的効果を予備的に評価し、その変化プロセスに関する理論的仮説を提示することを目的とする。

【方法】本研究は、心身ともに健康な65歳以上を対象とした。参加者は、茨城県取手市の文化施設 「たいけん美じゅつ場VIVA」を通じて募集した。WSは60分の練習と7分間の本番演奏で構成された。参加者は2グループに分かれ、2名の指揮者が言語的サインで提示する日本の文化に根差したリズム(三本締め、盆踊り等)を、打楽器で叩いて再現した。 WS実施の2週間前に研究説明と同意確認を行い、同意取得直後に参加者の年齢、性別、学校以外での楽器演奏経験、読譜能力を尋ねた。WS直前と直後には、参加者の心理状態を把握するため、心理的安全性、肯定的感情、否定的感情、主観的幸福度を測定した。特に心理的安全性は、他者との関わりに関する心理指標として採用された。WS後については、没入度(5段階評価)、感情表現の達成度(5段階評価)、および演奏満足感(UCL美術館体験尺度を改変)も評価した。これらの指標は、合奏と心理状態の関係に関する理論をレビューした論文(Smith, 2024)を基に選択した。WS前後の心理状態の変化はWilcoxonの符号順位和検定で、心理状態とWS後のみ収集した指標との関係は、Spearmanの順位相関係数とLeave-one-out分析で評価した。有意水準は0.05未満とした。本研究は東京藝術大学研究審査委員会の承認を得て実施された。

【結果】参加者は65〜77歳の6名(うち女性4名)であり、3名は学校以外での演奏経験がなく、1名は楽譜を読むことができなかった。ウィルコクソン検定の結果、主観的幸福度(p = 0.039)と否定的感情(p = 0.042)に有意な改善が認められた。さらに、没入度と否定的 感情の間に有意な負の相関(r = -0.857, p = 0.029)が示されたが、1サンプルを除外すると、相関係数が-0.725から-0.918、p値が0.028から0.165の間で変化した。

【考察】本WSを通じた主観的幸福感の向上と否定的感情の軽減が予備的に示され、没入感が高い人ほど否定的感情の緩和量が大きい傾向にあることが伺えた。これは、活動への集中が、否定的気分を誘発する出来事から、心理的距離を置くことに貢献したことが考えられる。

【結論】打楽器の合奏は、日本の高齢者の心理状態を改善し、特に演奏への没頭がこの変化を部分的に説明している可能性が示唆された。この仮説に基づき、没入感を高めるWS設計に加え、因果関係の実証を目指したさらなる研究が求められる。

 

 

ポスター(10)
実践報告「文化的処方の実践:同善病院での取り組みについて」
高木諒一(東京藝術大学)、福井彩香(医療法人社団同善会、一般社団法人コミュニティ&コミュニティホスピタル協会)、渡辺大輔(台東区社会福祉協議会)

【キーワード】
文化的処方、他業種連携、アートコミュニケータ、セルフケア

【発表要旨】
<背景>  東京藝術大学が中核となり41機関が連携した「共生社会をつくるアートコミュニケーション共創拠点」(通称:ART共創拠点)は、超高齢化社会における「望まない孤独や社会的孤立」に取り組んでいる。アートと福祉・医療・テクノロジーなどの他分野と連携し、多様な人々と社会とを結ぶ アートを介したコミュニケーションを用いて「文化的処方」の開発を進めている。

その活動の一つとして、台東区社会福祉協議会と医療法人社団同善会と連携した同善病院での取り組みがある。同善病院は2022年からコミュニティホスピタルとして、地域住民と医療者が気軽に集えるフリースペースみのるーむやイベントあおぞらカフェ等を実施している病院である。医療・福祉それぞれの繋ぎ手となるパートナーが主体性をもって協同し、共通理解を築いたプロセスと、アートコミュニケータと呼ばれる人たちが病院の中で共に活動を生み出していく中でみえたアートがつなぐ人と医療の新たな可能性について報告する。

<活動内容>  患者や住民と出会い、関わり方を広げるために、同善病院内にあるみのるーむや地域住民とつくるイベントあおぞらカフェで、アート作品を介したコミュニケーションの場を設けた。また、その活動に対して三者での振り返りを行い、それぞれの分野からみる価値と言語化する試みを行っている。

アート作品のカードを活用した参加者同士の対話とコミュニケーションを重視した活動からは、アート鑑賞の習慣がない参加者においても、アートという媒介の存在により、医療機関内や診察場面とは異なる質の対話が生まれ、他者の新たな一面を知る契機となった。この対話の場では、発言が否定されず受容される環境が保たれ、他者との関わりの中で自身の気持ちを振り返る、いわば自己対話的なプロセスが促された。その結果、参加者にとってセルフケア的な状態が自然に生じていた可能性が示唆される。 来場者や患者が制作した作品を展示し、その空間を活用した対話の場では、作品という「自己表現」の共有がきっかけとなり、外出意欲の乏しかった在宅患者の来場が実現し、対話的な関わりが可能となった。また、会場スタッフに医療・福祉・アートなど多様な背景を持つ人々が関与していたことにより、来場者は自身の状態や関心に応じた対話や関係構築を選択できた。医療・福祉・アートの専門職に加え、地域住民やアートコーディネーターなど多様な主体が関与することで、より多様な人々に開かれた対話の場を創出できる可能性が振り返りの場で示唆された。

<課題と展望>  医療・福祉・芸術の三者が協同するプロセスを通じて、アートが他者との関係性や語りのきっかけとなり、患者・住民が「支援される存在」から「関わる主体」へと変化していく様子が見えた。また、共に事例を振り返りながら対話を重ねたことで、共創するための対話と他者の理解の必要性、そして実際の場で関わる人々の変化をどう捉え、言語化し、還元していくかという課題に取り組んでいる。今後は、アートがつなぐ他分野との連携がどのように実施され、複数の事例から文化的処方というかたちを構造化していくことを目指し、継続性や日常的な仕組みづくりを行う。

 

 

ポスター(11)
研究発表「ろう者・聴覚障害者にとっての「音楽」の体験について ―当事者アンケートの分析を通じて」
萩原昌子(九州大学大学院芸術工学府 博士後期課程)

【キーワード】
ろう者と音楽、アクセシビリティ、音楽鑑賞環境

【発表要旨】
本発表は、ろう者・聴覚障害者にとっての音楽の鑑賞に関する考え方、受容のありようの実態を当事者アンケートを通じて明らかにし、より包括的な音楽鑑賞環境の実現に向けた課題を探ることを目的とする。 ろう者や聴覚障害者と音楽は一般的に対極にあると考えられているが、近年は個人でBluetoothなどの無線通信技術の発達により、スマートフォンの音楽配信アプリなどと補聴器をワイヤレスで繋いだり、音楽コンサートに出かけるなど、日常的に音楽のある環境を楽しんでいるろう者、聴覚障害者が見受けられる。一方で、公共文化施設の音楽に関するアクセシビリティの取り組みについては道半ばの状況が見られる。 2023年の6⽉から2024年の2⽉にかけてろう者・聴覚障害者を対象に⾏ったアンケートににおける自由記述(ろう者・聴覚障害者55件、聴者43件)等を通じて、ろう者・聴覚障害者の特性に基づいた⾳楽をどう楽しむかに関する回答についてKJ法をもちいて分析、検証を行う。 ろう者や聴覚障害者の音楽の享受の様相については、これまでは主に特殊教育学の分野で学校という限られたフィールドが調査研究の対象となっていたが、本アンケートでは対象とする年代と聴覚障害の属性を広くとって、日常的な音楽の楽しみ方やコンサートホールでの音楽享受方法のアイデアについて当事者の意見を聴取した。 アンケートでは、音楽を楽しむろう者の存在が明確になり、また、聴覚障害当事者にとっての「⾳楽」の認識が、社会における「⾳楽は⽿で聴くもの」という認識の影響を受けていることが明らかになった。⼀⽅で、ろう者・聴覚障害者は、「⾳楽」の楽しみ方として「⾝体で感じる」「視覚で受け取る」ことを求める傾向があった。 聞こえない、聞こえにくい人が、音楽堂やコンサートホールで、自分の感性で「音楽」を楽しむことができるにはどのようなアイデアがあるかについての自由記述の内容をKJ法を用いて体系化し、アイデアの属性を分類する。 その結果、日常的に音楽に触れる機会のあるなしに関わらず、「映像」「文字」「光」など視覚的な情報や「振動」を求める傾向があった。また、日常的に音楽に親しんでいるろう者・聴覚障害者と、日常的に音楽に親しむ機会を持たないろう者・聴覚障害者の回答の様相に違いがみられた。具体的には日常的に音楽に触れている場合には、コンサートなどの会場でのアクセシビリティの向上の希望を求める内容が多い傾向があったのに対し、日常的に音楽に触れる機会がない場合には音楽に対する考え方や理解に関する内容が見られた。また、聴者によるアイデアは「手話」が多く、ろう者・聴覚障害者のアイデアと聴者アイデアが異なることが明らかであった。 ろう者、聴覚障害者と音楽イベントを開催する主催者との相互理解が不可欠である。当事者が希望する音楽のアクセシビリティがどのようなものかについて、図解化、文章化を行い、誰もが能動的に音楽を楽しむ機会を広げるため、ろう者・聴覚障害者の音楽体験に関する言語化の検討につなげる。

 

 

ポスター(12)
実践報告「植物で絵を描くこと、「緑画(りょくが/plant painting)」手法の、造形及び環境教育への適用 –福島県立博物館での「緑画」ワークショップによる実践報告–」
村山修二郎(秋田公立美術大学)

【キーワード】
植物、芸術、環境教育、造形教育

【発表要旨】
植物で絵を描く「緑画」手法の造形及び環境教育への適用、さらには現代人の心身のケアにも活用の可能性を、実践により検証するために、様々な地域で「緑画」体験の機会を創出しています。今回の発表は、「緑画」の概要と、2024年2025年と福島県立博物館での新たな「緑画」体験のワークショップの実践を報告いたします。

「緑画(りょくが=村山がつくった造語)」とは、生の植物の草、花、実、枝などを、直接手で紙や壁に擦りつけて描くという、村山が新たに考案し形式化した絵画手法です。 「緑画」は、太古の時代から続いて来た大地を想像し、その地から少しの草花をわけていただき、感謝し自然にまかせて描きます。描いた植物の色は、そのままの色彩をとどめないため、四季のように絵が変容します。一つの物質化された生きた絵画であると共に、芸術という言葉を超えて自然そのものの根源的な世界、あり方をも表出させます。

福島県立博物館での実践は、2024年は、6月6日に慈光第二こども園(子ども40人、引率5人)、会津慈光こども園(子ども47人、引率5人)の会津の2園が時間差で博物館に来て、「緑画」ワークショップを(大判の水彩紙)共同制作しました。地に置いて描くことで地球を感じることが出来、この植物で描く「緑画」手法には最適です。子ども達は、木漏れ日の下で、紙の上に裸足で乗り「緑画」を体感して行くように、また遊ぶように楽しく描く様子から、植物で描く表現の豊かさを見られました。

2025年6月5日は、同じく2園のこども園が来て今回の「緑画」ワークショップは一人1枚から2枚(四つ切り/水彩紙)各自で場所を探して制作しました。制作時間と場所は2024年と同じ。個人にしたことで行動範囲が広くなり、植物を探しに行く中で、「緑画」を起点にあそびをつくり出す子どもも出て来て、それがまたこの手法が生み出す面白さです。

2025年8月1日は、大人を対象にした「緑画」ワークショップを企画し、保育園などの先生やその他計14名が参加し、この時は博物館のご提案で、会津の地域の植物に詳しい人をお呼びし、描きながら植物に関しても学べる機会の創出を試みました。一人1枚から2枚(四つ切り/水彩紙)、制作時間はこれまでと同じで、場所は博物館から近い鶴ヶ城児童遊園。

園の子ども達からは、園で植物で描きたい、残った植物を土に還そうなどの声からも、自然に触れることへの関心と、身近な命に関して学びはじめていることが理解出来ます。また、2025年8月の大人を対象にしたワークショップでは、時間を忘れるように子どものように外での活動を満喫している様子と、最後の振り返りで皆総じて楽しかったと言う声が聞かれた。植物に詳しい地元の年配の方と、「緑画」ワークショップ参加者さんとのコミュニケーションにより、複合した学びの機会になり、福島での「緑画」ワークショップの実践により大きな成果を得ました。

博物館と共創のような形で、「緑画」手法の可能性を探り、様々な実践により、地域に根差し、地元の方がこの手法の活動に何らかで関わっていただき、知られて行くことで、地域の自然理解からの環境教育にも適用が可能です。

この手法は、植物の命のこと、感謝すること、そして最後には、描いて残った植物をゴミ箱ではなく、すべて土に還し循環することも続けています。

最後に、「緑画」は上手い下手と言う世界を越え感覚を高め、自然の癒しの効果により人々の心に作用し、より豊かに生きること、また自然理解から地球環境の改善にも寄与し「緑画」手法が繋がり広まって行くことを目的としている。