投稿者「アートミーツ ケア学会」のアーカイブ

アートミーツケア学会オンライン・セミナー スタート!

アートミーツケア学会オンライン・セミナー「境界をまたぐ〈あそび〉と創造」がはじまりました!

URL:https://artmeetscare.stores.jp/

アートミーツケア学会では、アートとケアをひとびとがともに生きる場所ではぐくまれる、創造するちからと、それらのあたえあい、としてとらえています。わたしたちは、専門性や役割など、現代社会にうめこまれた境界や分断を超えていく創造性に着目し、とりわけ、これまでアートやケアとはみなされてこなかったものの豊さと価値を社会へ発信し、アートとケアを、マイノリティの視点などの、いくつもの角度からとらえなおすことを目的に、オンライン・セミナーを企画します。

<SEASON 1>として4回のセミナーを、順次、公開していきます。
初回は、山口(中上) 悦子さんによる「医療の質とアート」です。
https://artmeetscare.stores.jp/items/667ce3eb0662f2002917ae72

2回目は、ほんまなほさんによる「ダイバーシティ」で、8月中に公開予定です。

オンライン・セミナーは有料配信で、どなたでもご覧いただくことができます。
また、学会員の方には割引価格でコンテンツを提供します。

★会員限定割引情報★
メールマガジン「アート見つけや通信」にて割引価格で購入いただくために必要なクーポンコードをお伝えしています。
メールマガジンが届いていない会員の方はお手数ですが、事務局(art-care@popo.or.jp)までお問い合わせください。

【レポート】オンライン・ゆる輪読会(アートミーツケア叢書第3巻)

オンライン・ゆる輪読会(2024年3月7日開催)のレポート記事です。ぜひ、お読みください。

(アートミーツケア叢書第3巻)「『いろいろなことがあるけれど、すべて私の人生』と思えるようにートラウマインフォームドケア」

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兵庫県尼崎総合医療センターの産婦人科医師・田口奈緒さんと、画家・高濱浩子さんのインタビュー「『いろいろなことがあるけれど、すべて私の人生』と思えるようにートラウマインフォームドケア」の輪読会を開催しました。
お二人は、田口さんが2018年から病院で始めた「トラウマインフォームドケアプログラム(アート、ヨガ、音楽)」で協働されています。

《トラウマインフォームドケア(Trauma Informed Car:TIC)とは》
インフォームドとは「理解している・前提にする」という意味であり、TICは「トラウマの影響を理解した配慮ある関わり(ケア)を指す。
(中略)
TICは、公衆衛生的な知識に基づく関わりを指し、トラウマケア全体の基盤に位置付けられるものである。

“Informed(基本的理解)”のレベルは、トラウマの有無に関わらず、全ての人を対象とする。(引用:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000593579.pdf

輪読会の司会は女子美術大学の野呂田理恵子さんと美術待合室/国立アートリサーチセンターの中野詩さん。
参加者のみなさんには会が始まる前にZoomの名前をニックネームに変えてもらい、ニックネームに合ったジェスチャーを考えてもらいました。
アイスブレイクの時間になぜそのニックネームにしたのか、簡単な自己紹介、なぜそのジェスチャーにしたのかをお話ししてもらい、紹介されたジェスチャーを参加者のみなさんで一緒にやりました。ジェスチャーをすることで、初対面のみなさんの空気も和んでいきました。

(今回の参加者の方のニックネームは「りえぴょん」「うさちゃん」「しろくまのおへそ」「ハート」「さっかく」でした。やり取りはこちらのニックネームで記載しています。)

今回のゆる輪読会は、この、「3 “シェア” アンケートを著者にもシェアすること」が醍醐味のひとつ。書籍の著者が読者からのフィードバックを得る機会はありそうで、実はあまりないことです。学会内には運営を進めていくための色々なチームがあるのですが、このイベントは、学会内外を問わずアートとケアに興味がある人の交流を促し深めることを目的とする、「交流促進チーム」による運営でしたので、そのような趣向となりました。

ーーゆる輪読会で話されたことーー

《ゆる輪読会で使用した書籍について》
田口さんと高濱さんの対談形式の文章で、兵庫県尼崎総合医療センターで行われているトラウマインフォームドケアプログラム(以下、TICプログラム)についてのお話をされている内容になっています。
TICプログラムの目的は言葉によるカウンセリングではなく、ヨガやアート音楽で楽しみながら心と身体を癒すこと。参加者は主に産婦人科に入院中・通院中の患者さんや、がん支援サロンの参加者など。高濱さんはアートの活動で関わられています。
流産・死産を経験というトラウマとなるような経験をした方、またその現場に関わる医療従事者が辛い気持ちを外に出したり共有したり、受け止めたりする機会がないまま日常の中に戻っていく現状に、もう少し自分の「辛かった」という気持ちを出す場があった方がよいのではないか、という思いから始めた活動とのこと。
その活動の事例を交えながら、TICプログラムについてその想いが語られた全6章の文章です。

1ページごとくらいで交代しながら輪読していきました。読んだ人は次の人をニックネームのジェスチャーと共に指名します。章ごとに気になること・感想・思い出したことなどを共有していきました。

※各章のタイトルは書籍からの引用ではなく、今回の「ゆる輪読会」解説を含んだものになっているとのこと

 

<01〜02章 トラウマインフォームドケアの紹介(対象者の幅)、ケアとセーフスペース>
りえぴょん:「セーフスペース」というワードが気になった。
しろくまのおへそ:自分もオノマトペやアートを通したケアの実践をしていて、心の安全を保つ塩梅が難しいと思うことがある。
うさちゃん:イギリスで調査をしていた折に、トラウマのあるインタビュイーが話をし過ぎて気分が悪くなり、傾聴しすぎても良くないんだと思った経験がある。
しろくまのおへそ:「オノマトペ」は触れすぎそうになった時にちょっとそらしたりできる

<03〜04章 絵を描く具体的な進め方、運営者の振る舞い>
りえぴょん:00が「気配」なんだなと。
さっかく:気づくこと、話すことまでで良い、ということ。気づくこと、話すこと、出すことが大事ででもそれが難しい、ということなのかな、と。
うさちゃん:トラウマの回復に必要な要素の一つに、ご本人がまず「気づく」ということが大事だそう
りえぴょん:気づいて受け止める。受け止められるまで待つ、待つための場所という感じがした。

<05章 癒しでも治療でもない「中間」>
りえぴょん:癒しでも治療でもない「中間」だと。イギリスのこども病院で学んだ際、アートマネージャーが「アートをしない、という選択をさせるのもアート活動の大事な一つだ」と言われた。そのお話しと通ずるところがあって大事にしているところは同じなんだなと思った。
自己選択ができるということは、人間らしさを取り戻せる。
しろくまのおへそ:「患者や病人じゃなくて、〇〇さんという人間に帰れる」というところに共感。生活者としての自分に戻っていくことが回復に大切だと思っている。
うさちゃん:メンタルヘルスのケアでは、健康と不健康はぱっきり分かれておらず、それは連続していて、人はその間を行ったり来たりしているという考え方がある。患者の主観を大切に扱う話を精神科医やカウンセラーから聞いたことがある。そうした考えを田口先生も大事にされているように感じた。

<06章 TICプログラムを受けた人の「回復」>
うさちゃん:「回復」の定義が立場によって異なるんだなと。元の地点に戻るのではなく、今の時点で起きたことを当事者がどうにか受容していく、そのサポートを医療従事者がしているんだなと。『わたしたちの精神疾患』という当事者たちが書いた本があり、本当の意味での回復は、他者から見た「元に戻ること」ではなく、当事者それぞれの主観性が大事ということが書かれていた。
りえぴょん:「回復」という言葉の受け止め方が重要であることを知った。TICプログラムは「回復」につながりやすくなるものとしてやっているのか?
うさちゃん:TIC= Trauma Informed Careとは、トラウマについての知識や対応を学び、支援する相手にトラウマがあるかも、という視点をもって接すること。How toではなく、誰もが厳しい体験をしているという考えのもとにある。
ハート:新しくいろんなことが入ってきた状態にある。改めて本を読むのを楽しみにしている。しろくまのおへそ:「種蒔き」という言葉。これは無力感も込めた言葉なのかなと。アートが万能ではないことを分かりながらも願いを込めて種を蒔き続けたいという想い。そこに共感した。うさちゃん:私はTICについて一通り学んでいるのですが、非専門家なりにできることがあると感じた。それを医療者側も必要としていることが今まで腹落ちしていなかった。
さっかく:産婦人科で行われていることがすごいことだと感じた。精神的に安全な場所を確保できるということの大切さを感じた。医療従事者の方にとってもその時間を持つ必要がありながらもどうやったらその時間を持てるのかという難しさを考えさせられた。

参加者のみなさんそれぞれに、ご自身が取り組まれている活動があって、今日の書籍の内容が身近にあったり、これから、という方もいらっしゃったりでしたが、輪読して言葉を交わすことで、一人で書籍から汲み取る以上にぐっと情報が深まったり広がったりする時間でした。

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アートミーツケア叢書3

『いろいろなことがあるけれど、すべて私の人生』と思えるようにートラウマインフォームドケア
『受容と回復のアートー魂の描く旅の風景 』

アートミーツケア学会【編集】
ほんまなほ【監修】
中川 真【責任編集】
[定価] 本体2,000円(税別)
[ISBN]978-4-86500-129-7 C0036
[判型]A5判並製
[頁数]226頁
[出版社]生活書院 (2021/6/12)

■生活書院
https://seikatsushoin.com/books/amc3/

■GOOD JOB STORE
https://goodjobstore.jp/coll…/books/products/9784865001297

■Amazon
https://amzn.asia/d/gjjBn9x

オンラインジャーナル第15号総評

これまで「論文」「研究ノート」「実践報告」で構成されていたオンラインジャーナルは、第15号より「論文」「報告-アートミーツケアを考える-(以下、報告)」「エッセイ-アートミーツケアを試みる-(以下、エッセイ)」の3カテゴリに刷新しました。また、本号より、執筆の助けとなるように、論文と報告の「執筆ガイドライン」を編集委員会で作成しました。結果、投稿数は、論文4件、報告2件、エッセイ3件の全9件でした。採否の決定プロセスを経て、オンラインジャーナル第15号への掲載数は、論文0件、報告1件、エッセイ3件の全4件となりました。

「論文」は、これまでの「論文」と同様、査読付きの学術論文を募集するものです。募集要項において「アートとケアの実践や理論に関して学術性をもつ形で論述したもの」と定義しており、学術性を「先行研究に照らし合わせたときの新規性、十分な論述・考察・批判的検討による信頼性、社会への貢献・分野の開拓という観点での有用性を指す」としています。厳正な査読の結果、有益な調査や報告ではあるものの、上記に示す学術性を有する論文の質には届かない内容であったことから、いずれも採択にいたりませんでした。なかには、後述する「報告」での投稿であれば採択可能性が残されていたと思われる投稿もあり、今後編集委員会としては、論文の質向上のための取り組みとあわせて、新しくなったカテゴリの周知にもつとめたいと思います。

「報告」は、これまでの「実践報告」を引き継ぎ、「アートとケアの内容や方法を扱い、実践に立脚し、将来のアートミーツケアに関する研究に資する独創的な視点を有するもの」と定義しています。執筆ガイドラインに則した編集委員からの修正依頼を行うプロセスを経て、1件の投稿取り下げ依頼があり、1件が掲載となりました。本号より、報告には、会員1名によるコメントをもらい、記名式で公開することを基本としました。これは、実践者と研究者または実践者同士の双方向性のあるやり取りが、実践と言葉を深めていくことを期待したものです。本号はその一歩となる報告とコメントが寄せられたと考えられます。

「エッセイ」は、本号より新しく設けたカテゴリです。「アートとケアを主題に据えた、会員による自由な思索や論考」であり、「研究論文では表現しきれない文体や言葉遣い、思考の揺らぎをも視座に含む」と定義しています。エッセイの特徴は、「文章表現のほか、オンラインでの掲載であることを活かした写真、映像、音楽等のメディアを含めた表現とすることも可能」としていることと、テーマを設け、編集委員が依頼する選者が選定を行う形式としたところです。本号のテーマである「境界をまたいでみたら」に対して、文章表現2件、文章表現と写真等を組み合わせた1件の投稿がありました。選者である森合音氏は、「切実かどうか」「境界をこえようとしているか」を選出の指標とし、全3件が掲載となりました。

オンラインジャーナルは、アートとケアが交わる活動の探究と研究を進めるにあたり、多様な立場の人々が、現場で起こっている現象や意味を考え、共有し、次の知へと向かう手がかりとなる媒体となることを意図しています。会員の皆さんには、ぜひ今後もオンラインジャーナルを活用いただき、共に言葉や考えを紡いでいけたらと思います。

最後になりましたが、お忙しいなかご協力いただいた査読者、コメント者、選者の皆さまにお礼を申し上げます。

オンラインジャーナル編集委員一同

オンラインジャーナル第15号

[表紙]

[報告]「佐賀県障がい者芸術文化活動支援センターSANC」の取り組み:文化芸術へのアクセシビリティ向上の為に

著者:大江登美子、大石哲也

[報告/会員からのコメント]『「佐賀県障がい者芸術文化活動支援センターSANC」の取り組み:文化芸術へのアクセシビリティ向上の為に』へのコメント

コメント者:大政愛

[エッセイ]「表現をケアする表現。ケアを表現するケア」~ 2023 年1 月21 日石川県珠洲市ガクソーでのワークショップについての出来事から~

著者:塩澤宗徳

[エッセイ]境界をまたいでみたら:シングルマザーの癌患者と小学生のヤングケアラー

著者:榎原理絵(井村理絵)

[エッセイ]他者理解の為の自己と他者の心情に対する自己処理的思考

著者:眞﨑一美

[エッセイ/選者からのコメント]森の中の小さな泉のような

選者:森合音